会計事務所が見込み客を効率よく獲得する方法
会計事務所にとって、「見込み客の獲得」は永遠のテーマです。いくら実務能力が高くても、安定して顧客を獲得できなければ、事業の成長は見込めません。私はこれまで複数の会計事務所の営業・マーケティング戦略を支援してきました。その中には優秀な成績を残せたので独立開業したものの、見込み客の獲得ができずにあっという間に廃業手前まで追い込まれてしまうことになってから相談いただいた例も数多くあります。
長年培った経験と知識から、見込み客の正しい定義から、効率的な獲得方法、活用すべきツール、さらには失敗事例までを丁寧に解説します。
会計事務所の見込み客とは?
見込み客とは、「将来的に顧客になる可能性のある人・企業」を指します。これは単に「名刺交換した」「会話した」のような、知り合った程度の関係性を指すものではありません。相当しない相手に誤って見込み客というレッテルを貼ってしまった場合、思わぬ機会損失に見舞われてしまいます。私が過去にコンサルティングしたある会計事務所では、「名刺交換をした=見込み客」と考えてしまい、実際には温度感が低いリストに無駄な営業リソースを割いていた、必要以上の営業で相手が委縮してしまって機会損失を招いた、などの失敗がありました。
見込み客には以下の4つのステージがあります。
- 明確層:比較検討を終えて、強い関心と購買意欲がある状態。
- 顕在層:具体的に会計事務所を探しており、比較検討している状態。
- 準顕在層:会計サービスに興味を持っており、情報収集中の段階。
- 潜在層:まだニーズを自覚していないが、将来的に顧客となりうる層。
※潜在層の更に下は見込み客ではない、無関心層:ニーズがない、必要としていない層
すべてが見込み客として扱われますが、このように、「今すぐ契約」だけでなく、「数カ月後の契約」も視野に入れて、段階に応じたアプローチが必要です。
潜在層はまだ自身のニーズやサービスの情報をほとんど知らない状態なのにもかかわらず、積極的なアプローチや契約強行は危険です。
会計事務所が見込み客を獲得する方法一覧
会計事務所は、以下のような手段で見込み客の獲得をすることになります。
・ホームページからの問い合わせ
・メルマガ
・FAX
・DM
・SNS(FaceBook・X・LinkedInなど)での情報発信
・Google広告・SNS広告
・セミナーやウェビナーの開
・顧客紹介会社の活
・既存顧客からの紹
・飛び込み営業や電話営業(今は非効率な傾向)
なかでも、紹介に頼りすぎていた事務所では、紹介の流れが止まった瞬間に売上が急減するという事態に直面していました。継続的に見込み客を獲得するには、「受け身」ではなく「攻め」のマーケティングが不可欠です。
会計事務所が見込み客を効率よく獲得する方法
私が支援してきた会計事務所で、最も成果が出たのは「ターゲット明確化 × コンテンツ発信」の組み合わせです。
たとえば、ある事務所では「飲食業専門の税理士」というポジションを明確に打ち出しました。飲食業界特有の税務や補助金に特化した情報をブログやセミナーで発信することで、短期間で月10件以上の見込み客を獲得できるようになりました。もちろん、飲食業以外の顧問契約も受諾しますが、あくまで外部へのポジショニングという施策の一環です。
ポジションを明確にすると、見込み客としては自身のニーズにマッチしていると感じやすいのです。まずは安定して見込み客を集客して契約につなげていくことが重要です。
効率よく獲得するためのポイントは以下です:
- ニッチに絞る(業種、地域、年商規模など)
- 問題提起型のコンテンツ発信(「税務調査が入りやすい飲食店の特徴」など)
- リード獲得導線の整備(無料相談やPDF資料ダウンロード)
最大効率で見込み客を獲得するためのオススメツール
現代の営業活動には、デジタルツールの活用が欠かせません。以下は、実際に会計事務所様に営業支援ツールとして導入したのなかでも特に効果が高かったものです。
集客の部分はさまざまなサービスを利用した方が圧倒的に有利です。顧客管理は小規模の場合、無理にツールを導入すると必要以上に工数と費用がかさんでしまうので、事業規模を鑑みて選択することが重要です。
ツール名 | 月額料金(目安) | 主な機能 | メリット |
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ホームページ | サーバー:1,000円 ドメイン:100円 (制作費10万円~) | 集客、情報発信、問い合せ導線 | オンラインの名刺代わり。検索経由での自然流入が期待できる |
Google広告 | 1,000円〜上限なし | リスティング広告、ディスプレイ広告 | 顕在層を狙える。即効性が高く、アクセス解析も可能 |
メルマガ | 0円〜 ※システム利用料は別 | 見込み客への定期情報配信 | 顧客との関係を継続できる。自動化が可能 |
DM(郵送) | 1通50円〜200円程度 | 郵送によるアナログ営業 | 開封率が高い。特定地域や業種に絞ったアプローチが可能 |
FAX | 1通10円〜 | 一斉FAX配信、定期案内 | 高齢層やFAX文化の残る業界に強い。競合が少ない |
SNS(X、Instagram等) | 0円〜 (広告運用時は〜1,000円〜上限なし | 投稿・広告による集客、ブランディング | 無料で始められ、認知獲得や信頼構築に効果的 |
Sansan | 月額10,000万円〜 | 名刺管理、顧客情報の共有 | 紙の名刺をデータ化し、組織全体で情報を活用できる |
Sales Cloud(Salesforce) | 月額3,000円〜20,000円 | CRM(顧客管理、営業管理) | 顧客情報の一元化と営業進捗の可視化が可能。拡張性が高い |
Marketo(Adobe) | 月額10万円前後〜(要見積) | MA(メール配信、スコアリング、シナリオ設計) | 高度なマーケティング自動化が可能。BtoBに強い |
導入の際は、「ツールの機能」ではなく「自事務所の課題」に対してどう活用できるかを軸に選ぶことが重要です。
見込み客を見逃さないために意識するポイント
見込み客が目の前にいても、それに気づかず取り逃してしまうケースは意外と多いものです。特に下記のようなことが起きないように注意が必要です。
・コミュニケーションがとれていない
・トラブル対応の品質が低い
・問い合わせへの返信が遅い(24時間以内が理想)
・過失が多い
・顧客の業種や悩みに応じた情報提供ができていない
・費用対効果を意識できていない
・記録を残さず、過去の接点を忘れてしま
・一度断られたら連絡をやめてしまう
ある会計事務所では、問い合わせフォームの返信が2日後になっていたこともあり、それだけで他事務所に見込み客が流れていたという事例もあります。「即レス」は営業の基本です。ほかにもいくつかあげていますが、これらは見込み客の獲得だけではなく、解約防止にもつながるポイントです。
下記の記事にて詳しく解説していますので是非ご参考にしてください。
見込み客が逃げる!やってはいけない行動5選
見込み客の獲得数も重要ですが、「取り逃している数」に目を向けることも大切です。10件の見込み客で5件獲得(5件の取り逃し)できているのと、100件の見込み客で5件(95件の取り逃し)獲得できているのでは雲泥の差です。
以下は、実際にあった『やってはいけない』行動です。
・いきなり料金表
→ サービスの説明や品質を伝えないと比較対象にされて終わる可能性が大きいです。
・むずかしい専門用語ばかり使う
→ 経営者は、会計に詳しいとは限りません。契約後もこの調子だと不安です。
・営業トークが押し売り的
→ 「聞いてないのに長話」「契約させたい空気がずっと続いている」などと嫌がられます。
・問い合わせ後にフォローが一切ない
→ 一度の接触だけでは信頼関係は築けません。積極性も重要です。
・他事務所の品質やサービスを悪く言う
→ 自事務所の品位を落とすだけです。比較は重要ですが、他事務所の品位を貶めるような言動は避けましょう。
まとめ
会計事務所が見込み客を効率よく獲得するためには、「戦略」と「ツール」の両輪が必要です。ただし、最も大切なのは「誰に、何を、どう伝えるか」を明確にすること。過去に私が支援したなかでも、これが定まった瞬間に問い合わせが2倍以上に増えた事例が複数あります。
ぜひあなたの事務所でも、今の集客方法を見直し、最適なアプローチを検討してみてください。情報を『届ける努力』を怠らなければ、見込み客は確実に反応してくれます。